金先生
金一東(キム・イルドン)先生は、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴで内科・小児科を中心に、婦人科・ 小外科を含むプライマリーケアを提供する日系クリニックを運営されています。
日本人駐在員や留学生、現地在住の日本人を対象に、日本語で安心して受診できる医療を提供し、サンディエゴの日本人コミュニティに貢献されています。
また、金先生は日本で医師としてのキャリアを積んだ後にアメリカへ移住し、40代で研修を開始した異色の経歴の持ち主です。日本とアメリカ、両方の医療システムを知る立場から、海外での医療キャリアの実態について語っていただきました。
アメリカの医療システムは、日本と大きく異なります。特に、日本の国民皆保険制度と違い、アメリカではプライベート保険が中心です。
金先生によると、アメリカの保険制度は非常に複雑だといいます。
「アメリカの健康保険は非常に複雑で、同じ保険会社でもプランが異なります。同じ病気で同じ症状でも、加入する保険によって使える薬や治療方法が変わってくるんです。特に新しい薬は保険でカバーされないこともあり、まずは古い薬から処方しなければならない場合もあります。」と話します。
さらに、検査を受ける際にも制約があるといいます。
「CTやMRIなどは、医師が必要と判断しても、事前に保険会社の承認がなければ受けられないことがあります。日本ならすぐ検査ができますが、アメリカでは許可されないこともある。こうした違いは、医師として働くうえで大きなハードルになります。」と続けました。
金先生がアメリカで医師として働くことを決意した背景には、アメリカ医療への憧れがあったといいます。
「大学時代からアメリカの医療に興味があり、卒業後に横須賀の米軍病院(海軍病院)で働いていました。そこで優秀なアメリカ人医師と出会い、アメリカで学びたいという思いが強まりました。」と振り返ります。
「アメリカの医師免許試験(USMLE)をすべてクリアするのは簡単ではなく、働きながら試験に合格するまでに10年かかりました。アメリカでの研修を開始したのは40代になってからで、同期の研修医よりも15歳以上年上でしたね。」と語ります。
また、金先生は医学部入学も26歳と比較的遅かったため、医学の道を歩む決意をしたのは一般的な医学生よりも遅いタイミングでした。「医学部時代に2年間休学してアメリカに留学したり、日本で働きながらアメリカの医師免許取得を目指したりと、遠回りはしましたが、最終的にアメリカで医師として働く夢を実現できました。」と語ります。
アメリカで医師として働く上で、最も大きな壁になったのは英語の問題だったといいます。「横須賀での経験があったとはいえ、アメリカ本土での研修はまったく違いました。ナースからの電話(オンコール)対応が特に大変で、最初は何を言っているのかあまりわからないこともありました。」と当時を振り返ります。
そこで金先生は、ナースステーションに直接足を運び、対面で会話することでコミュニケーションの問題を解決したといいます。「言葉がわからないまま電話で指示を出すのは怖かったので、ナースステーションまで行って直接話を聞きました。それが逆に“この先生はすぐに来てくれる”と評価され、信頼を得るきっかけにもなりました。」と語りました。
また、カルテの省略語や筆記のクセに慣れることも大変だったといいます。「昔はすべて手書きのカルテだったので、ドクターの筆記が読めず、省略語も多用されていて非常に苦労しました。現在は電子カルテが普及していますが、当時は本当に大変でしたね。」と話してくれました。
金先生は、日本人患者が言葉の壁に直面せずに受診できる環境を提供することに大きなやりが いを感じているといいます。「アメリカで医療を受ける際、英語の壁が一番の問題になります。駐在員の方々や留学生は、アメリカの医療システムに慣れておらず、アメリカ人の医師と話すことに不安を感じることが多いんです。そんなときに、日本語で安心して診察を受けてもらえることが、私の最大のやりがいです。」と語っていました。
さらに、家族全員を診ることができる総合医療(プライマリーケア)を提供することにも意義を感じているそうです。 「内科、小児科、婦人科、小外科まで対応しているので、家族全員を診ることができるのが強みです。特に駐在員の方々は数年ごとに異動があるため、新しい環境で安心して医療を受けられることが重要になります。」と話しました。
現在、金先生はサンディエゴの日系コミュニティに貢献し続けることを目標にしています。
「パンデミックも終わり、これから日本人旅行者や留学生が増えてくると思います。引き続き、サンディエゴの日本人のために安心して受診できる環境を提供し続けたいですね。」とのことです。
また、若手医師や医学生に対して、積極的に研修の機会を提供することも考えているようです。 「うちのクリニックでも、日本から研修に来る医学生や研修医を受け入れています。短期間でも海外の医療を経験することは大きな学びになるので、どんどんチャレンジしてほしいですね。」 と語っていました。
金先生は、海外で医師として働くために必要なスキルとして、以下のポイントを挙げています。
金先生の経験から、海外での医療キャリアには言語の壁や文化の違いを乗り越える努力が必要であることがわかります。興味のある方は、ぜひ積極的に海外での経験を積んでみてください。
当ページに関しては2024年1月時点で弊社が独自に調査したもので、最新の情報に関しては各国当局にお問い合わせの上、ライセンスの取得に関する手続きを行ってください。